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『特別企画:林芳正自由民主党税制調査会インナーに聞く』②

2021/06/21 [MON]

当事務所の岡本税理士が進行役を務めました『特別企画:林芳正自由民主党税制調査会インナーに聞く』の記事が、中国税理士政治連盟の会報『中国税制連』2021年5月号(No.63)に掲載されました。

当HPでも、この記事を4回に渡って掲載します。

・第1回

・第2回

 

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―― DXとデジタル化についてですが大綱の9ページに押印義務の見直しがあります。押印は日本の伝統ではありますが、コロナ禍で霞が関に押印にだけ行くというようなことが新聞にも出ていたのですが、これは四月一日にスタートすることになるのでしょうか?

 

<林>これは税法が通って、おそらく参議院で予算が通ると同時に通るということですが、それから施行まで準備期間がいるのだろうとは思いますが、私も施行期日のチェックはしてきませんでしたが、法律に施行日が書いてあると思いますが、今年の三月の税制改正には間に合わないです。まだ法律が通っておりませんので今年度中はないでしょう。法律が施行され次第と思います。

 

 

―― この中で一番気になるのは押印義務廃止後の税務申告について,申告書を紙で出す場合に納税者の申告の意思をどういう風に捉えるのかなというのがあります。これまではハンコをついていましたが、税理士側が納税者の意思に関係なく一方的に出すというリスクも想定されます。

 

<林>一般的に今回の押印の変更については、基本的に今の制度で実印による押印とか印鑑証明書の添付を求めているものについてはそのままにしています。制度の趣旨に着目し、本人の意思の確認が重要で、実印や印鑑証明を求めているものについてはそのままとし、それ以外のものについては本人にサインだけしてもらうということで同等の意思表示があったものということにする。これは税だけではなくて、制度全体としてそういう方向性としています。

 

―― そうなると紙提出の場合に我々としては全部署名をもらわなければならないですね。

 

<林>ハンコを押す際に署名に変えるとかですね。

 

―― いわゆるアメリカとか諸外国のように。

 

<林>自分の実名を書く欄があると思います。押印してはいけないということではないですが。書類の種類によって今までも求められたわけではなく、民法の原則でいうと意思の表示があればいいということですから。基本的には名前を書くかハンコを押すかで、法律的に実印か印鑑証明を求めるということは、それだけ丁寧にやりなさいということなので、それ以外のものについては、署名か押印かはそれぞれに応じてお任せということです。結果論として押印を求めてしまうとデジタル化が進まないということなんですね。例えば、この署名はデジタル署名なんです。形式的には出てきますが、今回の制度では今まで実印・印鑑証明だったものは残すというものです。

 

 

―― 記帳水準の向上が大綱の15~16ページにあります。今回、持続化給付金等で税理士会もいろいろな対応に追われたのですが、確かに個人事業者の方の中には記帳されていない方が多いので、我々も非常に苦労しました。その中で、クラウド会計ソフトを活用することによって省力化しながら記帳水準を向上させる。具体的にはどのような施策が検討されるのでしょうか?

 

<林>大綱の118ページにそういうものでやっていだくと5%に相当する金額を控除して少しインセンティブをつけようということです。記録された事項に関して修正申告又は更正があった場合には、過小申告加算税の額について通常課される過少申告加算税の額から所得税及び消費税5%に相当する金額のインセンティブをつけます。これはちょっと議論になったのですが、きちんとした帳簿原則においてこの仕訳ができているものを進めていこうという今までの流れがあったのですが、クラウドの中には現行の厳格な要件を充足しないものもあるけど、今何もやっていない人が帳簿を付けられると。一回ずつやっておけば自動的にやってくれるという簡易なものがある。ある意味で何もやっていないところから簡易なものにレベルアップしてもらって、そこからちゃんとしたところにという、松竹梅で言うとなにもしていない「梅」から「竹」にというのでもいいじゃないかという案に対して、そしたら「松」から「竹」に下がる人もいるのではないかという議論がありまして、そこがいろいろ議論の結果、この「竹」というのは最終的なゴールではありませんよと。それは「松」がいいのは当たり前ですが、今仰ったように、きちんと帳簿原則に則ってされていない個人事業者が七割いる状況を改善するため、こういう便利なものを使っていただき裾野を広げるという目的であり、すでにやっている人がこっちで楽をすることはないですよという議論をした上で書かしていただきました。

 

―― この点でも結構議論があったということですか?

 

<林>ありましたね。せっかく「松」を作ってやっているのに「竹」に降りてくる必要はないじゃないかという議論が結構ありまして、そうは言っても「梅」の人も随分いらっしゃるということで、最終的にこういう恰好になりました。

 

―― 電子帳簿保存法ができて随分たちますが、実は税理士の中でもお客様に強く勧めてやっている方もいらっしゃるのですけど、残念ながら要件が非常に厳しくて、私もこれまで三回くらいしかしたことがないですね。それは努力が足りないなと自分でも思っているのですが、今回、大綱の9ページを読むとかなりラフになっているといいますか、コロナ禍で背に腹は代えられないような状況がみてとれます。例えば9ページの②の中ですが、具体的には「事前承認制度を廃止する」、今は事前承認していますがそういったことを廃止する。また「現行の厳格な要件を充足する事後検証可能性の高い帳簿については、信頼性確保の観点から優良な電子帳簿としてその普及を促進するための措置を講ずる」ということで、電子データを保存することを当面可能とするとか、領収書等の原本に代えてスキャナ画像保存制度の導入など、これはやっぱり、コロナ禍で電子化を進めないとどうにもならないということなのでしょうか?

 

<林>おっしゃる通りです。先ほどの例で言うと、「梅」から「竹」というのを推進しようじゃないかというのでこれを書かしていただいて、やっぱり入口を少し広くしないとなかなか入ってきてもらえないというのでこういうことをやったら、そうすると逆に不自然ではないかという意見が出まして、したがって元々のところに後から加わったものが「当面」という言葉なのです。「当面」がないと、ずっと「竹」がいいよということになってまずいじゃないかというご意見がありました。

 

―― 確かに、大綱の中には「当面」という言葉があるのはあまり記憶にないですね。

 

<林>「当面」というのはなかなか曖昧で。いつぐらいまでですか?と。やっぱり「松」から「竹」に下がる人が出てきてはいけないねという議論も踏まえて、これはあくまで過渡的なものですというニュアンスを出すために「当面」になったという経緯がございます。ただ、ある意味、先程のインセンティブと、こう保存要件の緩和というかハードルを下げることによって、なるべく多くの方に簡易にクラウド型のサービスも含めて使っていただくことで、まずは記帳していただきたい。その中から現行の厳格な要件を充足する事後検証可能性の高い電子帳簿についてはさらに優遇しますということで、バランスをとって書いてあります。

 

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広島総合税理士法人