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『特別企画:林芳正自由民主党税制調査会インナーに聞く』①

2021/06/04 [FRI]

当事務所の岡本税理士が進行役を務めました『特別企画:林芳正自由民主党税制調査会インナーに聞く』の記事が、中国税理士政治連盟の会報『中国税制連』2021年5月号(No.63)に掲載されました。

当HPでも、この記事を4回に渡って掲載します。

 

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 中国税政連広報委員会は、令和三年三月十三日(土)の午後、令和三年度税制改正大綱作成のキーマンである林 芳正自由民主党税制調査会小委員長代理を訪問し、下関市の議員事務所にてインタビューを行った。

 重近会長と井上幹事長のほか林 芳正後援会から中尾友昭後援会長が出席され、岡本広報委員長の進行により、このたびの税制改正大綱を皮切りに、所得税の将来的展望、納税環境のデジタル化、令和五年導入予定のインボイス制度のほか、今後の税理士に期待する事柄についてお聞きした。

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―― 広報委員長の岡本と申します。事前に項目をお渡ししているかと思いますがよろしくお願いいたします。まず一番目に先生方のお力で令和三年度の税制改正が無事決定されたところです。三年前、宮沢先生にも同じ質問をさせていただいたのですが、この出来栄えを自己評価すると何点でしょうか? 

 

<林>これは一番難しい質問になりますが、80点ぐらいかなと思っています。その次に成果とか苦労した点と重複するかもしれませんが、今までと様相を異にしたのはコロナ禍の中での判断であったことです。ちょうど一昨日10周年を迎えた東日本大震災は、被災した地域もしくは福島の場合は残念ながら原子力発電所の事故があったところがピークでした。それから段々復興が進んでいって、ある意味では先が“見える”ということですが、今回は税制の議論をしているコロナ禍では、“来年度があるか?”ということの見通しがつきにくい中で議論をせざるを得ないこともあり、中長期的な展望に立って着々と進めていくということをやりにくい時期でありました。異例のことですが、春に税調を開き今回の展望を広範囲に決めていただいておりました。それを受けて令和三年度ということですから、コロナの影響をどのぐらい考慮するのか?また、景気対策という意味でどういうことができるのか?このような議論でございましたので、ある意味メリハリというものがなかなか取りにくく、方向性としては景気対策とかコロナ対策の方向性がより強く出ざるを得なかった。私は大綱の三番目の検討事項がなくなるまでは、百点満点はないだろうと思っております。そういう意味では減点せざるを得ない。ただそういう状況の中で、ある意味政治的な判断で、その次に申し上げますが固定資産税などは理屈で言えばもう少し細かくやらなければいけないところを、国民感情というようなコロナ対策で整理判断させていただいたというところが、多少加点事由で80点くらいかなと思っております。

 

―― 先ほど春から始まってというのは、税調審議は例年より前倒しされていたということですか?

<林>そうですね。本体の大綱を作る税調は例年通り11月から始めましたので、変動等の措置を決めるために、一時的に春に開催したということです。3.11(東日本大震災)の対応時とか例がなかったわけではないのですが、そういう意味ではちょっと異例の対応ですね。それ以降に継続審議をしていたということではないです。

 

―― 4月以降については例年のスケジュール通りでしたか?

 

<林>はい、例年は8月期限で各省庁から予算の要求が概算要求という形で出されます。このとき合わせて税制に関する要望も出ていまして、それに基づき今度は党として各種友好団体の皆様から要望をお聞きして、政務調査会の各部会でそれをまとめ重点化して税調に要請する。これが通常のスキームです。ただ政府の方は、今回はコロナ対応もあり9月末に予算の要求、税制の要求が1か月ずれ込んだと思います。

 

―― そのあたり、80点と仰っていますが、目玉というか一番成果と実感されている部分はどこでしょうか?

 

<林>先ほど申し上げました通り、様々なコロナ対応、景気対策の中で将来に向けてデジタル、グリーンという政策に沿って一定の税制を作ることができたということでございます。議論は一昨年になりますが、令和二年度の税制改正ではコロナ前ではありますけども、5Gやオープンイノベーション税制を導入し、若干破格の税制を作り企業に滞留しているお金を何とか有効活用して将来の成長に繋げるという思い切った税制をやりました。それに続いて中長期的な成長経路を確保する、投資するということができたというのは正解だと思っています。

 

―― 去年の11月30日に先生をはじめとしたメンバーで「新たな経済対策に向けて」という提言を総理に出されたとホームページで拝見したのですが、その内容が今のグリーンとかDXと繋がってきているのですか?

 

<林>そうですね。去年のものは自民党の経済成長戦略本部というところがございまして、政調会長が本部長で、実質的な責任者は座長という組織で,岸田会長時代か

ら今度は下村さんに代わってから引き続きやってくれということで4年目になります。毎年予算の概算要求に先立って基本的な政府の姿勢を決めた「骨太の方針」を大体6月ごろに閣議決定いたしますが、同時に「成長戦略実行計画」というものを政府として閣議決定いたします。これに向けて党として成長戦略でこういうものが必要だ、というものを秋くらいから春にかけてまとめて、それを政府に申し入れるということをやっています。それがあって政府の成長戦略ができて、その後は随時コロナ対策ですね。

いろいろな補正等をやってきており、そういうものに対応して成長戦略本部やコロナ対策本部と合同で会議をやっています。何度か政府にも申し上げますが、一番のメインは夏の申し入れで、そこには特にデジタルとグリーンがこれからは大事であるということで、いろいろな申し入れをしております。特に、コロナで去年の四月から緊急事態宣言とか学校が閉鎖になるというようなことがありまして、特別定額給付金の10万円を支給するとか新しい施策が種々出てきたのですが、その時に役所に行列が出きてはいけないわけです。本来、諸外国を見ても給付が決定すると非常に速やかに支給がされていて、おそらくアメリカではソーシャルセキュリティナンバーのようなものに口座が紐づけされていて、「こういう対象の人に幾ら」という風に決まれば執行が非常にスムーズに行われる。日本の場合は10万円の支給の時に明らかになりましたけれど、マイナンバーを使ってもいいということにしましたが非常に間違いが多かった。しかも、申請書に「いらない」というチェック欄を作ってしまったのだから、間違えてそこにチェックして、いつまで経っても送金されて来ないなど様々な失敗がありました。特に「官」、中央・地方の行政機関で、デジタル化を進めなければならないということが前から言われていたわけですが、このコロナ禍、緊急事態宣言下によって浮き彫りになってしまいました。常々OECDの中では最下位に近いところにいると言われていましたが、不幸なことですが国民の皆様にそれを実感させてしまいました。このようなことを経験し、これを急激に進めていくため、我々の分掌でデジタル推進委員会という形で強力な権限を持たせていくこととしました。しかしその後すぐに総裁選になり、岸田候補はそのまま政調会長でしたが、当時の菅候補もちょっと名前を変えてデジタル庁の創設を訴えました。これは一連の春から我々が作ったもの、それを受けた政府の成長戦略の閣議決定の流れを受けて、それを菅総理が一丁目一番地で平井大臣という責任者を置いて進めています。この予算が成立し衆議院、参議院でも法律の審議が始まって、9月からデジタル庁がスタートすることになり、この点については今までと比べれば非常にスピード感のある展開ができたと思っています。

 

―― 今回の大綱の中で、前年以前からの所得控除、ちょうど今(インタビュー時)、我々が確定申告の中で改正された基礎控除額の対応をしているのですが、これまでの所得税改正の中で各所得控除の人的控除の方向性が示されています。その方向性というのは今後も改正になっていくのか、今後の予測も含めてお話をお聞かせください。

 

<林>我々も何年もこの税制の仕事をやってきましたので、インナーである私としても個人的におかしなことは言えないのですが、基本的な改正の考え方と、実際に改正する内容と、検討事項ということで三部構成としておりまして、今後どういう方向で税制改正をしていこうかという方針が検討事項としてまとめられています。

所得税に関するところでいくつかありますが、基本的には従来、夫婦・子ども二人でご主人が給与所得者で奥様は専業主婦、終身雇用というのが税収を考える上での大きなモデルでありました。確かに昭和から平成まではこういう方々が過半でしたが、平成後半くらいからはそうではなくなりました。特に、アベノミクスを推進するようになってからは、女性がどんどんと社会に進出していき、労働力人口が細っていることもあって大いに推進され共働きが当たり前になってきている。それから1人の世帯も増えてきている。それから転職ですとか、兼業・副業・フリーランスなど働き方が多様化されていまして、先ほど申し上げたモデル世帯というのが必ずしもモデルではなくなってきました。そうすると働き方、キャリアの選択に対して、税制、特に所得税がニュートラルでなくてはならないだろうということが基本的な考え方になります。それに従って、年金であったり相続も含めて基本的な考え方ですが、制度の安定性もありますので、急に令和になったから全部ガラッと変えるわけにはとてもいけませんので、大きな方向性を持ちながら、徐々にそういう方向性にやっていく。よって配偶者控除の見直し等も流れの中でやらしていただいています。

 

―― 配偶者控除,基礎控除の改正もそうですし、ひとり親控除もあり一通り出揃ったかなという感は受けています。

 

<林>家庭の形、世帯の形に中立的にやっていくという意味での大きなところは出揃ったのかなと思っております。

 

―― 年金の給付段階において一時金か年金によって課税方式が異なったり,公的年金の控除金額について違和感があったり、我々も理論的な考え方はわかるのですが、納税者の方から質問を受けてもなかなか答えられないのが現状です。この大綱を読んだ時にすっきりさせてもらいたいなと思いました。その点は、今後どのような制度設計をしていかれるのでしょうか?

 

<林>検討事項に書かせていただいたように、少子高齢化が進展して年金受給者が増大していくのと、同じ世代の中での公平と、世代間での公平感という意味で難しい問題があると思います。税制は年金制度の改革と連動せざるを得ません。、私も20年近く前に最初に作るのに関わりましたけれど、いわゆる401(K)に代表されるような確定拠出型年金もずいぶん増えてきています。これは確定給付型とはまた違った形になっていて、民間が出しているいろいろな老後の生活のための貯蓄的な商品と段々と似てくるということもあって、それぞれひとつずつ理屈はあるのでしょうけども、並べて見てみると「なんでこうなっているの?」と皆さんお感じになると思います。どうしても改造に改造を重ねていくため、大きく言うと拠出時、途中の運用時、そして給付時とでバランスを取るということと、それぞれの商品だったり制度だったりに着目するということから、個人に着目して、その人個人の生活がどのようになっているのかということを考えないといけません。制度的にこれはこれでやっている、それはそれでやっているという理屈があっても、一人の個人からして見ると「これはこれでこうなることを知っていればこっちにしたのにな」ということもあります。アメリカでは、IRA(Individual Retirement Account)というのを導入しました。実はこれはご縁がありまして、私が国会議員になる前にアメリカの議会でインターンをしておりました。バイデンさんと同じデラウェア州選出の上院議員でロスさんというところに半年以上滞在しておりました。その名前をとって「ロスIRA」というのもひとつの種類としてあり、机を並べていたスタッフが一生懸命法案を書いていたのを今頃になって思い出しております。そういう個人勘定のようなものを日本で作っていろいろなものをそこに入れて、そこでアカウントとして管理をする。そこに入れる時と出す時ということで一元化をしてやれば非常に見やすいし、公平感も出るのではと思います。実は、去年の政府税調でも有識者の方からそういうご提案があって、それが非常に参考になるということで、党税調でも政府側からもこういう例があるという形の説明を聞いております。検討事項にはさらっと「諸外国の例も踏まえつつ」と書いてありますが、これはひとつの有力な検討材料になるのではないかと思っています。

 

 

―― 証券税制の特定口座のようなイメージですか?

 

<林>NISAみたいなものを作って、これは証券投資だけですけども、もう少し幅広くいろいろな年金をここに入れて、税制の優遇はありますけども401(K)をやってもいいし、例えば民間の本当の貯蓄型のいろんな商品をどう扱うのかも含めて、なるべくここで一元的に管理していくイメージです。

 

 

―― 退職所得税制・退職控除についてですが、税理士のお客様には中小企業の経営者の方が多いのですが、皆さん税率の高さに悩んでいらっしゃいます。一般事業者の方も同じだと思いますが、その中で退職金に対する所得税は唯一課税が軽減される非常に大きな領域になっております。ただ、国税庁としてはおそらくそれは中立的ではない、給与所得税と退職所得税の操作のような扱いを受けるのが気に入らないのではないか。退職所得控除の改正があり高級官僚の天下りには二分の一課税の対象外になったりもしましたが、そこに手を付けたがっているのではないかと今回個人的に思ったのですが、その点はいかがでしょうか?

 

<林>これは全体的な話として、先ほど申し上げましたような大きなIRA的なものをやって退職金も一時金と年金払いと選択できたりするので、それをIRAで管理しようという話があります。もうひとつは先程申し上げたように働き方が変わってきて、役所を天下りして、いいところに行って二~三年お勤めしてリタイアという方以外にも、若くて外資系などに勤めて三年という方も出てきています。そういった方の中には三年で給与で貰うよりも、退職金の方で貰うようにすると、二分の一が適応される例が出てきているとの指摘があるので、そういう方に着目して、五年以内で、しかも高額の方だけということで限定的に穴を塞ぐということにしていますので、普通に今までのように長年勤められて退職金をもらう方には影響が及ばないようになっています。全体としては拠出運用給付の立体的なものを中長期的に検討しているところです。

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中国税制連』2021年5月号(No.63)『特別企画:林芳正自由民主党税制調査会インナーに聞く』より)

 

②へ続く

 

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