相続税の財産評価や取引相場のない株式の評価をするとき、リース資産をどのように扱うか解説します。
会計上、現行のリース会計基準によるBS計上科目(リース資産、リース負債)、2027年4月から新リース会計基準も導入されますと使用権資産やリース負債がBS計上されます。被相続人がリース資産を使用している場合、また、取引相場のない株式を保有するときその純資産価額の評価を行う場合にどのように扱うのか整理しておきます
法令や会計基準
<法令等>
財産評価基本通達にはリース取引の相続税評価は無いため、そこで、「個々のリース契約に基づきリース取引の性質等によって、個別に相続税の対応を検討することになる『税務通信3861号2025年7月28日税務の動向』」ようです。
<リース取引の整理>
検討
<被相続人がリース契約の借手>
リース取引の対象となる資産、およびリース債務について、相続財産や債務控除の対象から除外するとした裁決事例があります。事例では、個人事業でのリース取引が対象となっており、ここでは契約実態からしての借物や相続開始以後の将来に支払期日が到来する未払リース料までは、相続時点の財産評価や債務控除へは含めないとする考えでした。
<取引相場のない株式の評価>
1株あたり純資産価額を評価する際、その評価対象会社が会計基準によりース資産、リース負債 をBS計上していた場合には、前述の被相続人がリース資産を保有する場合同様、相続税評価は無いとして第5表で純資産評価の相続税評価額、帳簿価額から除外することとなります。
<新リース基準の場合>
「新リース会計基準では、オペレーティング・リース取引であっても原則、借⼿の貸借対 照表に使⽤権資産及びリース負債が計上されるが、会計処理が変わっただけで、相続税の 考え⽅は変わらない。使⽤権資産及びリース負債については、最終的にはリース取引の性質等に基づき評価対象となるか検討するが、これまで実務上、純資産価額⽅式の資産や負債としていなかったオペレーティング・リース取引のリース物件をリース会計基準の⾒直しに伴い評価対象とすることにはならない『税務通信3861号2025年7月28日税務の動向』」このことからも、従来の評価方法が変わることはないようです。
なお、土地やアスファルト構築物の賃借の場合、従来でいうオペレーティング・リース(賃貸借処理)で、新リース基準ではそれが使用権資産・リース負債計上となるもののあるでしょう。それらの財産評価の際には、借地権や、賃借権の評価の論点とはなると思われます。新会計基準の対象となるリース資産(使用権資産)は全て無視するのではなく、あくまで「個々のリース契約に基づきリース取引の性質等によって、個別に相続税の対応を検討することになる」のです。
以上
広島総合税理士法人