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教えて!相続先生『リース取引と相続税』

2025/10/31 [FRI]

相続税の財産評価や取引相場のない株式の評価をするとき、リース資産をどのように扱うか解説します。 

 会計上、現行のリース会計基準によるBS計上科目(リース資産、リース負債)、2027年4月から新リース会計基準も導入されますと使用権資産やリース負債がBS計上されます。被相続人がリース資産を使用している場合、また、取引相場のない株式を保有するときその純資産価額の評価を行う場合にどのように扱うのか整理しておきます 


法令や会計基準

<法令等>  

  • 相続税法、財産評価基本通達にはリース会計基準による資産、負債の評価が特に定められていません。
  • 財産評価基本通達5 この通達に評価方法の定めのない財産の価額は、この通達に定める評価方法に準じて評価する。

 財産評価基本通達にはリース取引の相続税評価は無いため、そこで、「個々のリース契約に基づきリース取引の性質等によって、個別に相続税の対応を検討することになる『税務通信3861号2025年7月28日税務の動向』」ようです。 

 

<リース取引の整理> 

  • リース契約:法的には賃貸借契約
  • 会計上、契約の実態に着目しファイナンス・リース取引やオペレーティング・リース取引と分類したり、新会計基準ではリース取引の識別をし会計処理をあてはめます。
  • 資産の所有者はあくまで貸手。契約で保険料、維持費その他さまざまな経費負担やリースの期間が定まります。
  • 相続財産評価では動産の借手側においてその動産を評価するものはありません。不動産の場合には借地権、賃借権(財産評価基本通達82,86,87)があります。

検討

 <被相続人がリース契約の借手> 

 リース取引の対象となる資産、およびリース債務について、相続財産や債務控除の対象から除外するとした裁決事例があります。事例では、個人事業でのリース取引が対象となっており、ここでは契約実態からしての借物や相続開始以後の将来に支払期日が到来する未払リース料までは、相続時点の財産評価や債務控除へは含めないとする考えでした。 

  • H20.4.22裁決事例:審判所の判断「…ファイナンス・リース契約に ついては、課税の公平の観点から、所得税法施行令及び法人税法施行令の規定 により、リース物件の売買があったものと法律上擬制して所得税額及び法人税 額を計算することとされているところ、これらの規定は、本件契約が賃貸借契 約であるという私法上の法律関係に影響を及ぼすものではなく、本件被相続人 が本件物件を売買により取得したとは認められない。」 

 

<取引相場のない株式の評価> 

 1株あたり純資産価額を評価する際、その評価対象会社が会計基準によりース資産、リース負債 をBS計上していた場合には、前述の被相続人がリース資産を保有する場合同様、相続税評価は無いとして第5表で純資産評価の相続税評価額、帳簿価額から除外することとなります。 

 

 <新リース基準の場合> 

 「新リース会計基準では、オペレーティング・リース取引であっても原則、借⼿の貸借対 照表に使⽤権資産及びリース負債が計上されるが、会計処理が変わっただけで、相続税の 考え⽅は変わらない。使⽤権資産及びリース負債については、最終的にはリース取引の性質等に基づき評価対象となるか検討するが、これまで実務上、純資産価額⽅式の資産や負債としていなかったオペレーティング・リース取引のリース物件をリース会計基準の⾒直しに伴い評価対象とすることにはならない『税務通信3861号2025年7月28日税務の動向』」このことからも、従来の評価方法が変わることはないようです。 

 なお、土地やアスファルト構築物の賃借の場合、従来でいうオペレーティング・リース(賃貸借処理)で、新リース基準ではそれが使用権資産・リース負債計上となるもののあるでしょう。それらの財産評価の際には、借地権や、賃借権の評価の論点とはなると思われます。新会計基準の対象となるリース資産(使用権資産)は全て無視するのではなく、あくまで「個々のリース契約に基づきリース取引の性質等によって、個別に相続税の対応を検討することになる」のです。 

 以上 

広島総合税理士法人