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『特別企画:岸田文雄前内閣総理大臣に聞く』④

2025/07/28 [MON]

当事務所の岡本税理士が進行役を務めました『特別企画:岸田文雄前内閣総理大臣に聞く』の記事が、中国税理士政治連盟の会報『中国税政連』2025年6月号(No.75)に掲載されました。

当HPでも、この記事を4回に渡って掲載します。

第1回

第2回

・第3回

第4回

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令和七年四月五日(土)、中国税政連広報委員会は、令和三年十月から令和六年十月まで内閣総理大臣を務められた岸田文雄議員(衆議院広島一区)に、公務ご多忙の中、取材の機会をいただくことができました。岸田議員は国政の第一線を離れてもなお、政策立案力と内外に通じる幅広い人脈により、現在も多方面で精力的に政治活動を行っていらっしゃいます。今回は、国民の関心事となった所得控除の行方をはじめ、国際社会における日本の立ち位置などについてお話をいただきました。

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今後の日米関係について

 

─ありがとうございました。今度は日米関係、外交についてお聞きします。一昨日、アメリカの関税が発動されました。車で言うと二五%です。我々の関与先も自動車産業関連の部品メーカーが多く大変な影響を受けると思われます。そんな中で先生は、「バランスのとれた外交」という行動理念を信条とされていらっしゃいますが、今後のトランプ政権と日本の日米外交のあり方についてご意見をお願いしたいと思います。

 

〈岸田〉はい、トランプ大統領は独自の考え方に基づいて、経済政策を変えようとしているわけです。基本的に「ディールディール」って言われますが、要するに二国間で決着をつけたいのです。今回の税率についても、日本が二四%、中国が一四五%、オーストラリアは一〇%、ベトナムでは四六%ととんでもない税率です。あの関税率は国家的な危機だと今騒ぎになっていますが、要は国ごとにどうディールしていくかという発想です。

 

 国際社会の秩序を考えるときに、二国間だけで物事を解決してはいけません。例えば地球的な変動問題とか、コロナを始めする感染症対策とか大規模な災害対策、あるいは自由貿易とか、このような地球規模の課題を解決する上においては二国間だけでは解決できない。これは当たり前のことです。ですから、アメリカとの間においてはしっかりと言うべきことは言い、そして議論し結論を出していかなければならない。そしてそれによって国内対策、自動車等の国内対策はもちろんしっかりしなきゃいけない。アメリカとはそういう現実的な対応はしながらも、他方ヨーロッパ諸国ですとか、東南アジアのASEAN諸国ですとか、その他の国々との連携はしっかり大事にして、この地球動の問題や、防災や感染症、自由貿易などの地球規模の課題について、日本はしっかりと議論をリードする存在でなければならない。そうしないと、島国で資源のない日本のような国は国際社会で生きていくことはできません。

 

 トランプ政権が何年続くのかわかりません。二年かもしれないし四年かもしれない。もしかすると、あのバンス副大統領が出てくるともっと長引くかもしれない。アメリカについては現実的に対応しなければなりませんが、一方で私たちの地球や国際社会を守るということにおいては、先ほど申し上げました二国間主義だけじゃなくて、多国間主義も大事にしていかなければならない。そっちの方において日本はしっかり旗を振る。そういったことによって国際社会の信頼を得ていく、こういった存在でなければならない。

 

 たちまち今のこの現実を見るとこの両面作戦で外交を考えていく、これが日本の立ち位置ではないかなと私は思っています。トランプ政権の長い短いもありますが、トランプ政権の評価も、アメリカの株価もどんどん変化しており、アメリカ国民がこれをどう評価するか、そのことによってトランプ関税の行く末も変わってくるでしょうし。その変化をじっくり関心を持ちながら見守りつつ、国際社会の多国間主義を日本はこれからも守っていく。このバランスが問われるんじゃないかなと私は思います。

 

──ありがとうございました。先ほどアメリカに対して言うべきことは言わなきゃいけないというお話をいただいたのですが、今の石破総理はどうなんでしょうか?

 

〈岸田〉言ってもらわなきゃいけないんでしょうね。だいたい日本の二四%の関税率も根拠がわからないですよね。

 報道によると、日本とアメリカの貿易赤字をその全体で割ったという数字。これを半分にしたのが大体の二四%だっていうのですが、そもそもそういう計算式にどれだけ意味があるのでしょうか。それから非関税障壁等についての批評がアメリカから出ていますが、非関税障壁というのはまさに数字じゃ表せない部分です。それをどのように数字に落とし込んだのでしょうか。アメリカの言い分は言い分として聞き置かないといけないのでしょうが、そもそもなぜこのような関税を押し付けられなければならないのか。これは誠に遺憾なことでありますので、言うべきことは言わなければなりません。しかしそれをどこまでアメリカが耳を傾けるのか。

 

 言うべきことは言わなければこれが当たり前だと思われますので、楽々と受けるわけにはいかないのではと思います。それを総理ある石破さんにやってもらわなきゃいけないんでしょう。

 

税政連活動の方向性について

 

──毎年、税理士会は建議権に基づいて税制改正建議書というものを、全国の税理士会員の意見をまとめて作っています。そして行政府に対しては建議書として建議し、国会議員の先生方には要望書により要望をしています。その中で、自民党の税制調査会において、私たち税理士会が出している意見・要望はどういうような位置にあるのでしょうか?私たちが今後どのように活動していけばいいのか、今後の指針としてご教授いただければと思います。

 

〈岸田〉まずもって税理士の先生方は、税制という国の根幹となる制度に関して、円滑に税務行政を進めていく上で、貴重な協力をいただいている存在だと思います。なおかつ、中小企業や零細企業の方々の状況ですとか、あるいは税務を巡る現場の大変なご苦労とかいったものを踏まえて様々な建議をしてくださっている。これは大変重要でそしてありがたい存在だと思います。税のプロフェッショナルとして、申告納税制度の円滑な推進のためにご努力をいただいており、さらには社会の安定と発展に大きな役割を果たしていただいています。このように行政や政治の立場からも大変ありがたいお役目を担ってくださっていると認識をしています。

 

 先生方のご要望については、今の自民党では、まずは財務金融部会においてお話を聞かせていただいて、それを税調の議論につなげ、そして結論を出していく。このような手順になっています。令和七年度税制改正においても、例えば中小企業の法人税率の特例の適用期限延長、さらには事業承継税制における役員就任要件の見直しなどについては、税理士会の先生方のご指摘とご要望を踏まえ結果として出されました。

 

 このように毎年の要望の中で、中小企業や零細企業者の立場に立ち、税務行政の現場の状況もしっかり踏まえた上で、貴重な提言をしてくださっている。税理士会は日本の税制という貴重な制度を維持するためにも、そして多くの国民の声をしっかりお伝えいただくためにも重要な存在であると思いますので、引き続きご協力をいただけるよう私たちは強く期待をしています。

 

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(『中国税政連』2025年6月号(No.75)『特別企画:岸田文雄前内閣総理大臣に聞く』より)

 

広島総合税理士法人