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『特別企画:岸田文雄前内閣総理大臣に聞く』①

2025/07/07 [MON]

当事務所の岡本税理士が進行役を務めました『特別企画:岸田文雄前内閣総理大臣に聞く』の記事が、中国税理士政治連盟の会報『中国税政連』2025年6月号(No.75)に掲載されました。

当HPでも、この記事を4回に渡って掲載します。

・第1回

第2回

第3回

第4回
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令和七年四月五日(土)、中国税政連広報委員会は、令和三年十月から令和六年十月まで内閣総理大臣を務められた岸田文雄議員(衆議院広島一区)に、公務ご多忙の中、取材の機会をいただくことができました。岸田議員は国政の第一線を離れてもなお、政策立案力と内外に通じる幅広い人脈により、現在も多方面で精力的に政治活動を行っていらっしゃいます。今回は、国民の関心事となった所得控除の行方をはじめ、国際社会における日本の立ち位置などについてお話をいただきました。

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──本日は公務ご多忙の中、貴重なお時間を割いていただきありがとうございます。広報委員長の岡本です。事前にご質問をお送りさせていただいていますので、お時間の中で可能な限りお答えいただきますと幸いです。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

令和七年度税制改正について

 

──早速一番目の質問ですが、令和七年度の税制改正の出来栄えについてお聞かせいただきたいのと合わせて教育の無償化、それから社会保険料の引き下げなどが当初案より修正されたということについてご感想をいただきたいと思います。

 

〈岸田〉はい。まず今回の税制改正ですが、基本的に経済の動き、三十年ぶりのデフレからの脱却に向けて、賃上げと投資で成長経済と豊かさを実感するための取り組みに資する税制改正ということで、様々な内容が盛り込まれ、経済の再生に向けて大きな役割を果たすことができる税制改正だと全体としては思っています。

 

 ただその中で、ご指摘のように税制改正に基づいて用意された予算が衆議院において二十九年ぶりに修正され、参議院においても初めて修正されました。今の少数与党政治の中で過去にない経緯を辿った結果でした。その中で、例えば高額療養制度の議論などについては、政府としてこの検討プロセスが準備不足だった等の指摘を受けたわけでありますが、ただ、一方で、少数与党政治の中で、与党と野党が議論をする中で結論を出していく。言い換えると熟議の国会と言えるような状況が出てきた。このような議論がじっくり国会で行われるようになったという点については、評価できる面もあったと思っています。

 

 ですから税制改正については、先程申し上げました経済再生に大きく資するものであった、それを実行する予算ということについては、異例の経緯を辿った。反省すべきこともありますが、熟議の国会という観点では評価できる面もあったのではないかと思います。

 

──ありがとうございます。社会保険については負担率の見直しなどをはじめとする複数の課題を国民民主党、日本維新の会と議論されていましたが、社会保険改正に必要な財源についての議論は、今回されていたのでしょうか。

 

〈岸田〉いえ。維新の方では財源確保については全く答えがなく、その後は与党で考えていただきたいというような無責任な提案をされるので、そういうことではないでしょうという議論の結果、今回はその財源については結論が出ませんでした。現時点では与野党で引き続き議論していくことが、与党と維新との話し合いによる結論だったと思います。

 

 

所得控除を巡る議論について

 

──ありがとうございます。続いて税制改正に関する二番目の質問ですが、当初昨年十二月の税制改正大綱では所得控除を二十万引き上げて百二十三万円として明記されました。これは国民民主党の批判などから国民的な議論に発展し、最終的には三月三十一日、参議院を通過し百六十万で落ち着きました。この点を踏まえて、今、先生が仰られた、少数与党下における自民党税調の立場についてご感想をお伺いします。

 

〈岸田〉 百三万円の壁についての議論の論点ですが、国民民主党はこれまでの最低賃金の引き上げ率から計算して百七十八万円に引き上げるべきだと主張した。一方、与党の方は、いや、最低賃金じゃなくて、物価上昇の割合を考えたならば百二十三万円であるべきと主張した。百二十三万円と百七十八万円の二つの案が出てきて議論したわけで、結果として今のところ百六十万に落ち着いています。ただ、百七十八万円の案については高所得者優遇ではないかという意見がありました。結果的に百六十万円に落ち着いたのは、低所得者への支援とか、中所得者に対する優遇ですとか、それから高所得者優遇を抑えるという観点から、バランスのとれた状況になっているのではないかと思っています。

 

 この件は、今申し上げました点もしっかり頭に置きながら、結論をどこに持っていくか、国民民主党と与党の間で引き続き議論が行われていくと思われます。税調の立場としては、今までの様々な税制の歴史や経緯をしっかり踏まえながら、国民の納得のいく結論を出すべく努力をしていく必要があると思います。

 

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(『中国税政連』2025年6月号(No.75)『特別企画:岸田文雄前内閣総理大臣に聞く』より)

 

②へ続く

 

広島総合税理士法人