トピックス

広島税理士のひとりごと『インボイス制度・免税事業者からの課税仕入経過措置の本体価格』

2023/08/20 [SUN]
インボイス制度(適格請求書等保存方式)の開始後、免税事業者から課税仕入した場合、
2026.9.30まで課税仕入れに係る消費税額の80%相当額について
仕入税額控除の適用を受けることができる、という経過措置があります。
 
この経過措置について、価格決めの上で税務上の重要なポイントは以下になります。
 
➀ 経過措置導入前後で税込での支払総額が同じ場合、税抜の本体価格が異なってしまう
② 経過措置は2023.10~2026.9の3年間は80%、2026.10~2029.9の3年間は50%、以後は無しとなる

 
➀ 経過措置導入前後で税込での支払総額が同じ場合、税抜の本体価格が異なってしまう
 
 
(参照)
 
国税庁は法人税、所得税のいずれも、1,100万円税込価格の免税事業者からの課税仕入(建物取得)について、
経過措置により80万円が仮払消費税、1,020万円が建物の取得価額となると説明しています。
ここでは税抜本体価格が原則時は1,000万円のところが、経過措置80%時には1,020万円となります。
 
本体価格が増えれば値上げ、下がれば値上げになります。
下記にも書いていますが税務上は棚卸資産、固定資産、交際費などへ影響を与えていくことにもなります。
 
そこで、買い手にとって値上げも値下げもない価額はどのように求めればよいかを考えましたところ、
以下のように計算できます。
 
◆設例
原則時
・税抜価格 1,000,000円
・仮払消費税   100,000円
・税込総額 1,100,000円
 
原則時の税抜価格1,000,000×(110/102)=経過措置の税込価額1,078,431
1,078,431×10/110×80%=78,431
1,078,431-78,431=1,000,000
原則の税抜価格1,000,000=経過措置の税抜価格1,000,000
∴80%経過措置の適用時に税込総額1,078,431とすれば、本体価格は変わらない
 
式中の110/102を覚えておけば、免税事業者から仕入れる場合、
原則時の本体価格に対していくらにすれば損得無しにできるかが簡単に分かります。
なお、これが適正価額であるとか強制できる価格という意味では決してありません。
あくまで考慮しておくと良いという意味で記しておきます。
 
◆1,080,000円では完全には合わない
設例から消費税100,000円×(1-80%)=20,000円 と計算し、
経過措置時には1,080,000円(税込)(1,100,000円-20,000円)でOK、と考えるのは、
本体価格の合致を目的にすると誤解です(おおよそでいいなら合っていますが)。
 
税込総額1,080,000円×10/110×80%=78,545
1,080,000-78,545=1,001,455 ≠ 1,000,000
本体価格が1,455円値上げとなります。
税込総額から経過措置の消費税を再計算するのでズレます。
 
◆110/102の求め方
原則時の税抜価格=A、経過措置時の税込価格=Bb とした場合、
 
原則の税抜価格A=経過措置時の税込価格Bb×(1-10/110×80%)
A=Bb×((110/110)-(8/110))
=Bb×(102/110)
A×(110/102)=Bb
 
A=1,000,000のとき、
1,000,000×(110/102)=Bb=1,078,431
 
ちなみに、110/102=1.078431..….と割り切れません。
電卓ですぐにはじくのに1.0784くらいとか、7.84%とか覚えておけば良いかと思います。
 

② 経過措置は2023.10~2026.9の3年間は80%、2026.10~2029.9の3年間は50%、以後は無しとなる
 
経過措置がある6年間は、免税事業者との取引はこの経過措置を踏まえて、
本体価格がどのようになるか考えておく必要があると考えます。
上記の例に加えて係数を考えてみましたのでご参考にしてください。
 

                                     以上

 
広島総合税理士法人