トピックス

教えて!法人先生『役員報酬、下げるのは・・・自由よね?』

2022/11/25 [FRI]

社長:

先生、会社(3月決算)の収益が下がって資金繰りが悪いので、

私の役員報酬を下げようと思うんですけど問題ないですよね。

来期は更に先行きが不透明なので、

来月(12月)から月額80万円から半分(40万円)に下げたいんですが・・・。

 

税理士:

社長、ちょっとお待ちを。

役員報酬には増額の要件があるのは以前説明したと思いますが、

(参照:教えて!法人先生『役員報酬を上げたいんだけども・・・』)

実は減額にも要件があるんですよ。

 

社長:

へ?減額にも・・・ですか??

 

税理士:

そうなんです。

定時株主総会により減額する場合(事業年度開始の日から3か月以内に改定)には問題ないのですが、事業年度の途中で減額するためには要件があるんです。

 

社長:

ええ?役員報酬を下げると会社の利益が増えるのにダメなんですか?

 

税理士:

役員報酬は通常定時株主総会で決定されるので、

臨時的に変更するために合理的な理由を求めているのです。

 

社長:

その要件って何ですか?

 

税理士:

次のとおり大きく2つあります。

表57-1 法人税法施行令第69条第1項第二号ロ、ハ(定期同額給与の範囲等)
要件
1 臨時改定事由によるもの ・役員の職制上の地位の変更による改定
・職務の内容の重大な変更等やむを得ない事情による改定
2 業績悪化改定事由によるもの 経営状況が著しく悪化したこと等やむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情による改定

1の方は理由が明確ですが、

2については経営が著しく悪化したこと等、減額せざるを得ない合理的な理由が必要です。

 

社長:

あっはっはっ、先生、自慢じゃないが、

うちは売上も落ちてるし、資金繰りも悪くなってきたんで、

明確に、合理的に、徹底的に「経営状況が著しく悪化」してますよ。

ということは、問題ないってことで・・・。

 

税理士:

そう簡単にはいかないんですよ。『法人税法基本通達9-2-13』は次のように規定してるんです。

法人税法基本通達9-2-13
(経営の状況の著しい悪化に類する理由)
 令第69条第1項第2号《定期同額給与の範囲等》に規定する「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」とは、経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることをいうのであるから、法人の一時的な資金繰りの都合や単に業績目標値に達しなかったことなどはこれに含まれないことに留意する。

下線部にもありますように、

法人の一時的な資金繰りの都合は「経営の状況が著しく悪化したこと」には該当しない、

と書いてありますよね。

 

社長:

え~納得いかないなぁ・・・。

ほんとーに、うちの会社は著しく悪化してるんですって。言っていて悲しいですけど。

 

税理士:

食い下がりますねぇ。

ではさらに、同通達の逐条解説もひも解いてみましょう。

 どのような事情が生じたときが「その他これに類する理由」に当たるかについては、事柄の性質上、個々の実態に即して判断するほかなく、いずれにしても事前に定められていた役員給与の額を減額せざるを得ないやむを得ない事情が存するかどうかにより判定することとなると解される。ただし、「経営状況が著しく悪化」との規定振りから明らかなように、少なくとも、法人の一時的な資金繰りの都合や単に業績目標値に達しなかったことなどの理由は、これに含まれないこととなる。
 また、例えば、経営の状況の悪化により従業員の賞与を一律カットせざるを得ないような状況にある場合は、通常は、本通達にいう「経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情」がある場合に当たるといえよう。

この書きぶりからすると、

報酬の減額判断こそ会社に委ねられているものの、

その減額理由については「やむを得ない事情が存するか否か」により判断する、

という極めて抽象的な規定が置かれているだけで、

複数の合理的理由を準備するなり、定時株主総会での減額を待つなり、

いずれにしても安易な減額はしない方が賢明かと思います。

 

社長:

・・・はぁぁ、まずは営業に行って、減額しないでもいいよう頑張ってきますかね。

 

 

広島総合税理士法人