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『特別企画:加藤勝信自由民主党税制調査会小委員長に聞く』②

2022/05/19 [THU]

当事務所の岡本税理士が進行役を務めました『特別企画:加藤勝信自由民主党税制調査会小委員長に聞く』の記事が、中国税理士政治連盟の会報『中国税制連』2022年5月号(No.66)に掲載されました。

当HPでも、この記事を4回に渡って掲載します。

第一回

・第二回

第三回

第四回

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── 今回の大綱作成にあたり一番ご苦労されたところはどんなところでしょうか?

 

〈加藤〉 そうですね。税制改正の中身にはいろいろとありますけれども、ひとつは住宅ローン減税に関してです。議論のスタートの背景には会計検査院から控除率と実際の適用金利を比較すると金利の方が低いのではないかとのご指摘があり、それがひとつの契機となりました。したがって控除率そのものを下げるという議論が求められる中で、そこにカーボンニュートラルを組み込みながらどう答えを出していくのかということが議論の軸であったと思います。あと、賃上げに関しては、これまでも賃上げの税制はありましたが、それを有効に効かせるためにどのような対応を行えばいいのか、しかも新しい資本主義という考え方の中でどう組み込んで行けばいいのか、この辺りが議論の中心だったと思います。

 

── やはり住宅ローン減税のように非常に多くの国民や住宅メーカーさんに係るような税制改正では、いろいろな方面への配慮というか、利害関係のある方がたくさんいらっしゃいますよね。

 

〈加藤〉 特に住宅ローンを使う若い方が多いですよね。そういう皆さん方の声も聞きながら進めていかなければならない。そして、景気の動向もあります。そういった面に配慮しつつ、先程も申し上げたより質の高い住宅、省エネ住宅の増加を図っていかなければならないという社会的な要請も考えて議論させていただきました。

 

──今回の税制改正大綱では税理士会からの建議内容において、交際費の損金算入の適用期限の延長、財産債務調書の提出期限が六カ月になったという部分、それから法人版事業継承税制特例措置の延長ということを取り上げていただきました。

 

〈加藤〉 そうした要請については積極的に議論され、「しっかりやれ」という声ばっかりだったと記憶しております。

 

── 先程先生が仰いました賃上げ税制なのですが、特に大手企業の新規雇用ではなくて継続雇用の方に要件が動くことと、大幅に税率が上がるという内容ですので、正直、我々中小企業相手の税理士にとってはそこまで大手の企業に関わる事は少ないのですけれども、特に大手の企業が対象になる部分が多いと思われますので、非常に大きな減税策であると私は思いました。やはり産業界からそういった要望が強かったのでしょうか?

 

〈加藤〉 賃上げ税制の内容は途中で少し見直しも行われていましたが、岸田政権の掲げる新しい資本主義の実現のために成長と分配の好循環を成し遂げていくための賃上げをさらに促していくとの観点から議論を行いました。積極的な賃上げを促すために、賃上げを行う企業の税の軽減を積極的に図っていく。こういう流れでありましたから、大企業で税額控除率が三〇%、中小企業の場合四〇%まで引き上げられたわけであります。また、大企業では持続的な賃上げと、いわゆるマルチステークホルダーの人に対する経営の取組みを宣言するという、これをひとつの要件に課すことにしました。賃上げに係る税率でこれだけ控除率が高いというのは過去最高だと思います。これをうまく活用していただいて賃上げはもとより、研修も含まれていますので、人的資本の拡充を図っていただく。そして、このような宣言をすることで、協力会社も含めた賃上げの流れを作ってもらえたらいいなと思っております。それが功を奏したのか、もちろん景気の状況等もありますが、三月十八日時点での春闘の結果を見ますと、回答が出た七百七十六組合の加重平均で六千五百八十一円、二・一四%の増加と、前年に比べて千十八円、ポイントで〇・三三ポイント増、しかも増加幅が二%台になったのは三年振りと、途中経過ですけどもこのような結果が出てきています。是非、この流れをさらに中小企業も含め広がっていってもらえればと思います。もちろん赤字の企業は活用できませんが、そうした企業に対しても補助金等いろいろな施策を講じて、しっかり賃上げの機運を作り上げていきたい。特に、足元の物価が上昇していますので、賃上げはしっかりやっていかなければならない、進めていかなければならないと思っています

 

── 正月明けに大綱が出た時にお客さんの所を回ると、この話は多くの経営者の方がされており、かなりインパクトがあったのだろうなと思います。その中で先程もお話のありましたマルチステークホルダー宣言という、私の経験では初めてで非常に面白い取組みだと思ったのですが、政府の方針や税調の議論の中でこれを入れようという背景があったのでしょうか?

〈加藤〉 ベースとしては先程申し上げました総理の十月の所信表明において、いわゆる株主だけではなくて従業員も取引先も恩恵を受けられる三方良しの経営を行うことが重要だと仰っていました。そのようなことを踏まえて、大企業と言っても資本金が十億円以上従業員数が千人以上という規模ですからかなり対象は限られてくるとは思いますが、従業員への還元とか取引先への還元といったことを公表していただきます。公表すると関係者全員が見ていますから当然それをやっていくという形に繋がっていくと思います。大企業は賃上げしたけれど、協力会社はその分吸い上げられて全然逆だったという事ではうまくいかないわけですから、そのような意味で自分の企業だけではなくて、グループ全体に広く賃上げが拡大していくことが大切です。それは新しい資本主義にも繋がることだと思いますし、先程も申し上げました三方良しという事に繋げていくためにも中で議論してきました。かといって一個一個チェックしていくことはできませんから、こうした形で宣言し公表していただくということがひとつの要件になったわけです。

 

── 賃上げ税制も税額控除もそうなんですが、一方で二〇%までの限度というのが存在しています。今回私が確定申告した個人病院なのですが、千四百万円従業員の給料が増えていて、控除率が一五%なので二百十四万円の控除が発生するはずなのですが、利益が出ていないため六十三万円しか発生しないケースがありました。

〈加藤〉 この仕組みは本件だけではなくて、様々な租税特別措置にキャップを被せ、改正上の影響も勘案して付与するというのが一般的です。そこはそれとしてご理解いただきながらしっかり儲けていただく、そして従業員にしっかり還元していただきたいと思っております。

 

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(中国税制連』2022年5月号(No.66)『特別企画:加藤勝信自由民主党税制調査会小委員長に聞く』より)

 

③へ続く

 

広島総合税理士法人