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広島税理士のひとりごと『法人税の取扱いが所得税通達にある!?』
~低解約返戻保険の取り扱い・・・改正所得税基本通達36-37~

2021/12/21 [TUE]

低解約返戻保険(逓増定期保険)の名義変更は、法人と個人も「節税」となることで、生命保険会社は販売に力を入れ、多くの資金に余裕のある法人(特に同族会社)は節税商品として利用してきました。 

国税の調査官は、かねてからこの保険を許しておいていいのか疑問に思っていたところですが、国税庁は、やっと(2021.6.25)通達(所得税基本通達36-37:保険契約等に関する権利の評価)を改正し課税方法を変更しました。

 

低解約返戻保険が節税商品であるしくみは、次の例による説明からわかると思います(わかりやすくするため極端な例で表現しています)。

 

最初の5年間は、毎年の保険料は1,000万円(内訳:損金400万円、資産計上600万円、支払保険料総額5,000万円)、解約返戻金0円、6年目に解約返戻金は4,000万円になる保険契約とすると、

6年目の前日で法人から個人(社長)に名義変更(権利譲渡)すると、個人(社長)は0円で解約返戻金の権利を得て、翌日に解約すると4,000万円が手に入ることになります。(個人は一時所得となりますので、課税対象所得は1/2課税となり約2,000万円となり、所得税の負担が役員報酬より相当低くなります)、法人は、5年間で2,000万円の損金計上と、名義変更(譲渡)による3,000万円(資産計上分の取崩損)の合わせて5,000万円の損金計上ができます(この時の法人の収入金は、解約返戻金が0円であることから0円となります。)。

 

この度の通達改正により、今後は(2019.7.8以降の契約から)、資産計上額で評価する(0円 ⇒ 3,000万円)こととなり、個人(社長)は名義変更により3,000万円を法人に支払うことになります。

 

【図】

 

 

通常、全くの第三者に名義変更(権利譲渡)する場合、少し待てば解約返戻金4,000万円が入るのが明らかなのに、敢えて解約返戻金が0円の時に譲ることは、法人の利益を損ない損失を与える行為であり、「経済的合理性がない」ということになります。

このようなことができるのは、同族会社であるからなせる業で、法人では損失が発生し、個人では大きな利益を受けても税負担が少ない。

法人の損失の分を個人(社長)が課税されるならまだしも、両者とも税負担を免れるという、不当な税負担の減少となり、これを許してよいのかという、同族会社の行為計算否認の考えが通達改正の背景にあると思われます。

2019.7.8以降の契約からこの取り扱いを対象とする経過措置となっていますが、それ以前の契約であっても、あまりにひどいものは、国税の伝家の宝刀といわれる「同族会社の行為計算否認の規定」を抜く(適用する)余地が全くないとはいえないのでは?と、少し心配はあります。

 

ところで、新通達は所得税に関するもので、法人の側での保険契約の評価方法には特に触れられていません。

では、法人から法人への名義変更の場合はどうなるのか、この改正所得税基本通達36-37の法人から個人への名義変更と同じルールが適用されるのでしょうか?

国税庁が出した改正所得税基本通達36-37解説7なお書によれば、「法人が他の法人に名義変更を行うなど法人が他の法人に保険契約上の地位(権利)を移転した場合の当該地位(権利)の評価についても、本通達に準じて取り扱うことになる。」と記載されています(ちなみに、改正前の所得税基本通達36-37の逐条解説には、法人という言葉はでてきません。)。

 

所得税の基本通達に法人税の取り扱いを記載しているのは? しかも、通達本文でなく解説に記載とは・・・ 

なぜ法人税の基本通達にも記載しないのか?あまりに不親切であると思うのです。

 

法人税に関わる者は、所得税の取り扱い(通達本文でなく、その趣旨解説までも)を熟知していないといけないという(ある意味、税務のプロとして当然という意見もあるかと思いますが?)、恐ろしい事になっています。

くわばら、くわばら

 

 

広島税理士法人