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教えて!相続先生『相続税のない国ってあるのですか?』

2020/10/17 [SAT]
資産家にとって相続税は頭のいたいテーマです。
 
でも世界には相続税のない国ってあるのでしょうか?
実はあるのです。
 
よく言われるのは,シンガポール、マレーシア、オーストラリア、カナダ
そして意外なところでいうと中国です。
 
中国は共産主義を掲げていますから,
最近とみに増加している富裕層に課税をしたいのだと思いますが,
イデオロギーの点から相続税を課税できないのでしょうね。
 
もともと相続税があったのになくなった国もあり,
例えばカナダとオーストラリアは1970年に廃止,
1992年にニュージーランドが続き,
高福祉で知られるスウェーデンも2004年に相続税をなくしたようです。
 
カナダは相続税がなくなった代わりに,
親から子への移転財産に対してキャピタルゲイン課税つまり,
親の取得時と相続時の時価の差額に対して所得税を課税しています。
 
日本でいうと先祖からの不動産の含み益について「のみ」所得税を課税することとなります。
親が形成した財産は通常所得税を支払ったあとの財産でしょうから,
こちらに死亡時に再度相続税を課税すると「二重課税」となるので、
その点でいうとカナダの制度は理にかなっているといえます。
 
日本では,相続税は1905年(明治38年)4月、
前年に始まった日露戦争の戦費調達を目的に導入されました。
 
当時の大蔵省は酒税や所得税、
地租(固定資産税)を相次いで増税しましたが,
それでも足りず、欧米にならって臨時で導入したのが
相続税だったとされます。
 
日露戦争後、ロシアから賠償金が支払われず、
財政が逼迫した政府は相続税を存続させ、
現在まで110年も続く恒久税制となったのです。
 
日本では戦時の臨時税が恒久税になった典型的な税といえます。
相続税のある国でもその課税形態はさまざまです。
多くの納税者にとって,税額に影響するのは、
「課税最低限の金額」となります。
 
日経新聞によると、相続人が1名と仮定して,
日本は3600万,アメリカは6億5000万,イギリスが6000万,
ドイツで5400万,フランスで1350万とのことです。
国よってまちまちとなっています。
 
では、日本人の富裕層も相続税のない国に住所を
移転してしまえばよいのでしょうか?実はそう簡単ではありません。
 
過去にいろいろな課税逃れの事件によって
相続税法は大変厳しく改正が重ねられました。
 
ひとことでいうと,被相続人(財産を持っている人)と
その相続人が10年以上国外に住所がないと,
日本国内にある財産は課税されてしまいます。
 
また、国外転出課税という制度も創設され,
一定規模の財産を国外に転出させようとすると,
含み益に課税されることになりました。
 
こちらは特にオーナー会社の社長さん関係者が
含み益のある株式を国外に移転するときの
封じ込めとして制度化されました。
 
世界的に資産格差の是正が叫ばれている中で,
相続税はこの点の格差是正のツールとして最も注目されています。
ピケティ先生もこの点言及されています。
 
日本で相続税がなくなるということは当面なさそうですね・・・・
 
 
広島総合税理士法人