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『特別企画:岸田文雄前内閣総理大臣に聞く』③

2025/07/21 [MON]

当事務所の岡本税理士が進行役を務めました『特別企画:岸田文雄前内閣総理大臣に聞く』の記事が、中国税理士政治連盟の会報『中国税政連』2025年6月号(No.75)に掲載されました。

当HPでも、この記事を4回に渡って掲載します。

第1回

第2回

・第3回

第4回

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令和七年四月五日(土)、中国税政連広報委員会は、令和三年十月から令和六年十月まで内閣総理大臣を務められた岸田文雄議員(衆議院広島一区)に、公務ご多忙の中、取材の機会をいただくことができました。岸田議員は国政の第一線を離れてもなお、政策立案力と内外に通じる幅広い人脈により、現在も多方面で精力的に政治活動を行っていらっしゃいます。今回は、国民の関心事となった所得控除の行方をはじめ、国際社会における日本の立ち位置などについてお話をいただきました。

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防衛特別法人税について

 

──ありがとうございます。続きまして今回の税制改正の中で、いわゆる防衛特別法人税が創設されました。今回トランプ大統領が就任され、日本のGDP六百兆円に占める防衛費の割合を三%まで引き上げるべきだと主張しているようです。今回の防衛特別法人税につきましては、一定の法人税額に四%を乗じて企業が納付するということなんですが、防衛側の国民の安全と財産を守るものであるということであるならば、所得税を財源とすることも考えられたのではないかと思うのですが。法人税を財源とする理由について、ご意見をお伺いしたいと思います。

 

〈岸田〉これはですね、令和五年度の税制改正において議論になりました。その年の非常に厳しい安全保障環境の中で、戦後最悪と言われている複雑な安全保障環境の中で、国民の命や暮らしを守るためには、今までの防衛政策を転換して防衛費を抜本的に充実させなければならないと考え、このような決断をいたしました。

 

 そのことによって、GDP比二%、令和四年度から令和九年度の五年間で四十三兆円までに拡充させる。その原資を支えるため令和五年度の税制改正の議論になったのですが、その際にまずは徹底的な行財政改革を行うことによって、その財源をひねり出していくこととしました。しかしながら、ひねり出すと言っても他に社会保障や教育や重要な予算もあり限界があります。全体の四分の一だけはどうしても行財政改革だけでは賄うことができないから、この四分の一だけは国民の皆さんにお願いをして、これは未来の子供や孫の世代に対する今の世代の責任であり、国民の命や暮らしを守るためには、今の世代が子供や孫の未来のため、今の世代で賄おうじゃないかということになりました。これが防衛に関するこの増税の議論でありました。

 

 そして四分の一でありますが、令和五年度税制改正を見ていただいたらわかりますが、法人税だけじゃなくて所得税も引き上げる。ただ、所得税の部分は七年度の税制改正ではまだ結論が出ていないので、とりあえず結論が出た法人税の部分だけお願いしているということです。それで法人税についても五年度の税制改正で四から四・五%と決めてあったと思いますが、その中でも最も低い四%にしました。なおかつ、法人税額五百万円までは税負担をお願いしないということです。

 

 中小企業等に対する配慮ということで、全体の九四%は税はかかりません。全法人のうちの六%だけに負担をお願いする。要はですね、マラッカ海峡が封鎖されたら、もう死活的に影響を受ける大企業にはこの最低限の四%だけお願いする。一方で九四%には全然負担はお願いしないということです。最低の四%で、なおかつ九四%に負担は及ばないという税制に仕上げてもらった。

 

 

 これは先ほど申し上げました賃上げ、あるいは投資に十分配慮した対応であるとして、経団連等も評価されている。アメリカは日本に対してどこまで防衛力の強化をするのか、数字はまだ示していません。ただ、三年前に二%って言っておかなかったら、今回のトランプ関税も、こんなものでは済まなかったはずですので、三年前に二%までやるといったことは大きな意味があったのではないかと思います。

 

 しかし、EUなどに対する要求を考えると、アメリカが今後さらなる上乗せをしてくる可能性はあとみられていますが、日本としては令和十年に向けて防衛力を拡大している最中で、何よりも別に金額ありきじゃなく、日本の国民の命や暮らしを守るためには何が必要かということで今積み上げているわけです。アメリカに対しては、令和十年に向けて今必要なものを積み上げていく。このようなことを説明しながら、令和十年以降についても具体的に本当に必要なものは何なのか、これをしっかり丁寧に説明することによって理解を得ていく。このような取り組みが今求められているんじゃないかと思っています。

 

 現在、日本の周辺の安全保障環境はますます厳しくなっています。北朝鮮はロシアと協力することによってミサイル、あるいは核に関する技術を格段進歩させて、中国とロシアは日本列島周辺で頻繁に共同軍事訓練を繰り返している。このような状況を考えると、日本の国民の命や暮らしを守るためには防衛力がどこまで必要なのか、その際に今まで進めてきた取り組みも合わせ真剣に考えていかなければいけませんし、防衛特別法人税の財源部分についても、今申し上げた考え方に基づいて、中小企業等の賃上げや投資にできるだけ影響が出ず負担にもならない形で進めていく取り組みを、経済界も評価してくれているんじゃないかと私は思っています。

 

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(『中国税政連』2025年6月号(No.75)『特別企画:岸田文雄前内閣総理大臣に聞く』より)

 

④へ続く

 

広島総合税理士法人